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ふゎふゎホヨモッテリ

いろんな物を作っテリ

020 文字を書くって難しい

男もすなるSS書きといふものを、ホヨモッテリもしてみむとて、すなり。
いやこれほんとに漫画とかの方が楽かもしんない。どっちもそんなにうまくはないけど。

ハルキ対グレーテル


対峙


無人となったヴェルニースの酒場。
じっとりと湿った空気の流れ込む割れた窓からは、
青黒く重い雲のわだかまった夜空が覗いている。

無音。刀傷の残るテーブルの向こうに、小柄な女が座っている。
ローラン特有の端整な顔、生気のない左目がこちらを見ている。右目は。


……久々に炭鉱夫の酒場に出向き、成り行きで乱闘が起こり、
ひと暴れしたところで振り向くと、彼女はそこにいた。
爆弾が炸裂した後のような酒場の暗がりに、机が一組と、彼女があった。

ふと、えも言われぬものを感じ、フォーカスを変える。
世界を外から俯瞰するような、超客観視とも言える技術で、
技能や能力を数値化したり、内面をある程度視覚化したりと融通が効く。

視線が合い、ニコリと笑う彼女からは……
人の形をしてはいるが、皮一枚の下に別の物が詰まっているような、捉えがたい違和感。
それがぞろぞろと這い出してきて足元に縋り付いてくるような感覚。
それに裾を引かれるようにして、向かいの椅子に座った。…


「…腕、たくさんあるんですね」
「あったほうが便利だからな」
「わたしの腕も、便利なんです」
徐にローブを捲って、右の手袋を外す左手袋は妙な凹み方をしている。
コキコキという微かな軋み。

ず、る、り、と手袋が外される。
ローランの面影が窺える細い手に、ガタガタの刀傷で、呪文が彫り込まれている。
「魔法の詠唱に役立つおまじないです。あなたは魔女なのですから……」

久々に総毛立つ感覚を味わった。
髪。彼女の持つ違和感の正体は、底知れない愛憎や狂気がつくる黒紫の髪だ。
袖から、傷から、滑らかな髪が流れ落ちて床付近を揺蕩っている。
悪意などの類いではない、むしろ好意だ、好意だが、とはいえ。

敵意であれば机ごと微塵切りにするところだが、
こういった世界で気持ち良く戦っていくには人付き合いもかなり重要だ。
ゆえに、スルスルと寄り添う好意を叩き斬ることは出来ない。言葉を探す。

無音。数秒ののち、彼女は手袋をはめ直してまたこちらを見た。
「あなた、ううん、わたしの名前、グレーテルです。教えてませんでしたね」
「ハルキだ。ハルキ・ノイ」
ようやく、それだけを口にした。
「あなたの、名前、ハルキ……ハルキさん」

また数秒の無音を置いて、ぼたぼたと雨音が聞こえ始めた。
細い首をくいと回して、グレーテルは外を見やった。
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a film iP!2015年12月号(晋遊舎様)掲載
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