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173 O探偵団外伝・つづき

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173 O探偵団外伝・つづき

去年公開した「3本足のレリカ」の続編というか後半に当たるパートを、
どうゲーム化すればいいかわからなくなってしまったので文章にしておきます。
なんか推敲とかするの大変だからそのまま投げるね…… 




O探偵団外伝 銀髪の少女U

「編入生来るの、今日だったよね」
「療養から戻ってきたんだって。精神病院」

机文字(きもんじ)は教室の会話をそれとなしに聞いている。
編入生の話は机文字も知っていた。
この中途半端な時期に、いかにも訳ありな編入生。上院(うえいん)の大好物だ。
上院が健在であれば、帰りにはノイローゼになるほど質問責めにしていただろう。
ふと上院の奇行を思い出す。
「身」のセーブデータを再現しようとして中古のプレステを破壊したこと。
きさらぎ駅を探して、2泊3日で行った静岡の電車で何度も寝落ちを繰り返したこと。
……存在しない同級生の死を受け止め切れずにいること。

ひとしきり回想に浸り、ふと気づくと朝礼が始まっていた。
クラスメイトの目は、扉の擦りガラスに写るシルエットに釘付けになっている。
担任に促されて入ってきた生徒の名前は何かを思い出させそうだったが、
今の机文字にはどうでもいい事だった。

「初めまして、星戸 避去忌(ほしど ひさき)です」

星戸 避去忌は廊下側の一番前の席に座った。
通院の前歴というある種の気まずさからか、影の薄さからか、周囲に人だかりが出来るようなことはなかった。
一週間が終わるころには、もう誰も避去忌を気にしなかった。

放課後、上院のクラスを見て帰る。今日ももう帰ってしまったようだ。
レリカの一件のあと、上院は完全に虚脱状態に陥っていた。
毎朝遅刻寸前に登校し、一日呆然と席に座り、終礼が終わればふらふらと帰宅する。
机文字も、最初は毎日昼休みに様子を見に行ったりもしたが今はもう半ばあきらめている。

帰路に着くべく歩き出したとき、何かとすれ違った。
夕日を背に受けたそのシルエットの輪郭を乱反射した光が隠している。
何かが教室に入っていくのを見て、机文字は4日ぶりに星戸 避去忌のことを思い出した。

避去忌は上院の机を一瞥してから、教室に残っていた女生徒二人に近づいていった。

*

ある日、廊下で星戸 嘘の名前を聞いて机文字は総毛だった。
星戸 嘘。上院が存在を主張した同級生を、机文字は彼のイマジナリーフレンドのようなものだと推察していた。
それを、その辺の生徒が知っている。

自他共に認める相当なコミュ障である机文字には、引き止めて話を聞くようなことはできなかった。
……知り合いのことを話すような調子だった。相手も自然に受け止めていた。

上院は数日前から、ずっと欠席していた。

*

それから数日が経って、ついに星戸 嘘の話を聞かない日は無くなった。
嘘は些細な所作にも魅力を感じるような少女で、誰とでも仲良くできる無邪気さのようなものを持っているようだった。
机文字は毎日、星戸 嘘の話を振られないように祈りながら過ごした。

ある日、机文字はふと思い出したように上院のクラスに向かった。
最近は嘘のことに気をとられ、上院のことを気にする余裕が無かったのかもしれない。
南北に伸びる廊下には西日が差し込み、光も影も真っ赤に染まっている。

その光を背に受けて、星戸 避去忌が上院の机に腰掛けていた。

「……星戸」
その名前を口にして、気持ち悪い感覚を覚える。嘘と同じ苗字だからだ。
避去忌が振り返る。その顔は夕陽の影になって真っ黒に見えた。

「上院君は、嘘さんと仲良かったのかな」
聞くが早いか、机文字は避去忌に掴み掛かっていた。

*

精神科への通院歴。星戸 嘘。
あからさまな共通項に何かが爆発して掴み掛かったが、何から訊けばいいのか。
よくわからない感情。口の中にまずい味が、鼻に妙な臭いが広がる。
5秒。10秒。……30秒。沈黙を破ったのは避去忌だった。

「星戸 嘘さんは実在するんだ」
避去忌の口調は、上院が彼女を語るときのそれに似ていた。
「僕の遠縁の親戚で、最近再会した……病院で知り合った上院君の知り合いで……」
「びっくりした……小さいころ、親戚の集まりで会っただけだったから……」

「彼女は…死んだ……」
動揺と恐怖で呼吸もままならない。搾り出されたような、弱りきった自分の声を机文字は遠くで聞いた。
「何があったか知らないけど彼女は死んでなんかない……みんな知ってるじゃないか」
避去忌の最後の一言は力強かった。ポケットを探り、スマホを取り出す。

星戸 嘘の写真がホーム画面に表示されていた。
銀色のショートボブは染めたものなのか、頭頂部が黒くモノクロのプリンのようだった。
ほぼ真横から撮ったカットで顔立ちは分かりづらいが、美少女であることが見て取れた。

机文字は、動揺が収まっていくのを感じていた。安堵してすらいた。
星戸 嘘は実在して、また登校した時にでも上院と再会して、O探偵団を再開する。
そうだったら良いのにと、何度も願ったのだから。

「ん、机文字と、えーと…星戸?どうしたんだ?」
痩せぎすの国語教師がこちらを怪訝そうに見ている。
「何でもありません、先生……今日は帰ります、さようなら」
避去忌が退室していくのを、机文字は半ば放心状態で見ていた。

*

気づけば夕日は落ち、あたりは真っ暗になっていた。
星戸 嘘。避去忌。……星戸、嘘。
実在を疑っていることを知っているような口調だった。
上院に似た口調だった。
そのうち全て元通りになる、なのに安堵はどこかに消えてしまった。

顔を上げたとき、切れかけの街灯に銀髪が照らされるのを見た。
誰かが100mほど先の十字路を横切っていったのだ。

星戸 嘘。そうか。
追いかける気力も無く、机文字はふらふらとした足取りで歩いていく。

星戸 嘘は実在したんだった。

*

翌日、曇天の薄暗い夕方。
頭が痺れたようだ。ふわふわとして、視界に現実性が無いような気がする。耳は。聞こえている。たぶん。
上院の机の前で机文字は立ち尽くしていた。

モノクロのプリンのような髪には、花の飾りのついたヘアピンがいくつか留められている。
なぜか学ランを身に着けているが、体格は女性のそれだ。……学ランに、胸の起伏がくっきり浮かんでいる。

星戸 嘘が上院の机の前に立っていた。
「上院くん、まだ学校来てないんだね……」
現代文の授業で見た「鈴のような声」という表現を思い出す。
「あ、ああ……ちょっと体調が悪いみたいで」
すらすらと会話を繋げられた自分に驚いた。
「そっか。じゃあお見舞いいこうよ」
「ああ、そうだな……いつにしようか」
「今日は天気も悪いし、明日がいいんじゃないかなぁ」
他愛ない会話が続く。昔からの知り合いのように、すらすらと会話が続く。

*

避去忌が入室してきたのは、見舞いの算段がついたころだった。
「お見舞い、僕も行ってもいいかな」
陰が落ちた避去忌の顔を見て、嘘が笑う。
「うん、避去忌くんも行こうよ。明日の放課後、ここに集合ね」
「わかった。……机文字君と話があるから、靴箱で待っててくれないか」
「うん。待ってる」
嘘は開けたままの扉から教室を出て行く。パタパタという足音がフェードアウトしていく。

机文字が足音の方向を目で追うのを、避去忌はじっと見ていた。
「もう手遅れだろうから、言う」
ゾワリとした。
「星戸 嘘は、実在しない」
気が抜けたように体が動かない。避去忌は反応も見ずに話し続ける。
「所謂イマジナリーフレンドなんだ。タルパとも言う。
 僕なら暗示と心理操作で、ある程度簡単に作ることができる。人によるけど」
そうか。こいつが。
「上院君については、申し訳なかった。あそこまで入れ込むとは思ってなかったんだ」
「……僕は、嘘さんが『存在することにしておきたい』んだ。
 協力してもらえないなら、責任を持ってもう見えないようにする。
 上院君のことはそれから考えよう……最善を尽くすよ……」
喉が勝手に絞まっていくようだ。怒りを、込めて、言葉を搾り出す。
「お前の、思い通りには、絶対に、しない」
避去忌は心底驚いた顔をしていた。
「……分かった。記憶を消したりなんてSFみたいなことはしないから、とにかくリラックスして欲しい」
リラックスも何も、先ほどから脱力しきって動けないのだ。怒りもどこかを素通りしていくようだった。
避去忌は机文字を上院の机に座らせ、うつ伏せに寝かせる。眠気に襲われながら机文字は思う。
絶対に、避去忌の、思い通りには、しない。

*

「……ここが『大口屋敷』か」
机文字と上院は古びた洋館の前に立っていた。
「……ああ。一説には『3本足のレリカ』の根城だっていう……」
「よし、O探偵団の復活にはちょうどいい案件だ。行くぞ!!」
上院はいつも通り、どんどん先へ進んでいく。机文字はなんとか後をついていく。
上院の背中は頼もしい。行き当たりばったりで、無謀で、幼い。それでも、頼もしい。
何事もなく2階に辿りつく。「……待て」上院が制止する。
数秒の間を置いて、廊下の壁を破って左右から巨大な手が突き出し、岩をも砕くような勢いで打ち合わされた。
轟音とともに館が揺れ、ぱらぱらと埃が落ちてくる。
「……やっぱりな。壁に手をついたとき、おかしいと思ったんだ。」
上院の危険察知能力には目を瞠るものがある。そのおかげで、どこに行っても大怪我や事故にあったことはなかった。
ふと違和感を感じる。肩を掴もうとするが、すり抜ける。暗転。

*

「も、もうやめようよぉ……」
嘘が心配そうに言う。そりゃそうだ、上院は中古で買ってきたプレステをガッシガシ殴っている。
「『身』が出た時に!本体に負担が!掛かってたかも知れないからさ!!!!」
机文字はそれを見て腹を抱えて、涙が出るほど笑っている。
「もう!机文字くんもとめてったら!」嘘が頬を膨らます。
上院。上院 累。……星戸 嘘。……嘘。暗転。

*

星戸 嘘がいる。上院 累がいる。
机文字は迷わず、上院の腕を掴んだ。

*

机文字は避去忌の腕を掴んでいることに気がついた。
机文字はまた、言葉を絞り出す。
「お前の、思い通りには、絶対に、しない」
数十秒の沈黙。避去忌は、泣いていた。

*

「……元々は、嘘さんは、僕だけのタルパだった……
 段々、彼女が実在しないことに耐えられなくなって、皆に……
 皆に肯定してもらえれば、僕も心から実在を信じられるんじゃないかって……」
「もう、諦めた……机文字君の行動を見て、思い直した……
 僕は間違っていたんだ。すまない……星戸 嘘は……消そう……」
机文字は、避去忌の襟首を掴み直す。
「ほ、本当は、星戸 嘘を……忘れたかったんだ……僕は」
何か言おうとしたのを、机文字は遮って宣言する。
「お前の思い通りには、絶対に、しないって言っただろ」

*

「……上院君は、女性経験はあるのか」
「なっ……!?な、ない、と、思うぞ?」
「そうか。大体承知した」
O探偵団室……と上院が勝手に決めた空き教室。
机文字と避去忌は最後の打ち合わせを終えていた。
やがて、上院の大きな足音が聞こえる。
机文字と避去忌の視線が交差する。
机文字は「分かってるだろうな」と、避去忌は「約束は守る」と。

「御機嫌よう!」と上院が入ってくる。
「ごっきげんよーう!!」と星戸 嘘が合わせながら入ってくる。

上院は気力充実、入院前の元気を取り戻している。
その後ろから星戸 嘘。……学ランに包まれた胸が窮屈そうに揺れるのが見えた。
「……ごきげんよう」「授業お疲れ様」机文字と避去忌は自然に返す。

*

机文字は、避去忌に星戸 嘘の幻影を作り続けさせることを選んだ。
何を言っても上院が彼女の死、非実在を受け入れられないのは、親友の机文字が一番わかっていた。
だから、その幻影を自分も、原因の避去忌にも背負わせることにしたのだ。

避去忌曰く、集団幻覚やプラシーボ効果のようなものだという。
上院が嘘のほうを向く視線を感じ取れば、自然とそこに嘘は現れる。
上院のことを誰より理解する机文字と人間心理を究めた避去忌なら、
上院と嘘の会話を予測して自分たちの見る嘘に反映させることが出来る。
3人の共同幻想。机文字と避去忌は精神を壊しながら、上院の精神を補完していくのだ。

*

たまに思うことがある。心理操作でタルパを作れるような人間のことだ、
全部ひっくるめて星戸 嘘を信じる人間を増やす芝居だったのではという疑念。
避去忌の表情からは何も読み取れないが……

「ところで避去忌!聞きたいことがあるんだが、前の学校でおかしな噂や事件について聞いたことは……」
上院の怒涛の質問攻めが始まった。たじろぐ避去忌に、上院と一緒になって質問を連発する嘘。
あの得体の知れない避去忌が、逃げ場を求めてこちらをちらちらと見ている。

机文字は久しぶりに、涙が出るほど笑った。

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「3本足のレリカ」を作ってる途中でえっ後半パートもADV形式でやるの……?となって放置していたもの。
ノベルゲーとかシャドウゲイトみたいなやつとか色々考えていたけど、小説で公開します……

「O探偵団シリーズ」については、いかにも既存のラノベかなんかのゲーム化っぽく見せるための設定だった。
怪奇かと思ったら犯罪事件だった、犯罪事件だと思ったら超常現象だった、
しかも主人公たちは嘘を生み出すため精神おかしくしてるので何が本当で何が幻覚なのか……
という虚実入り混じったノワールムービー的なラノベをイメージして作った。

これが結構ハマってしまったのでこれで「外伝」を終えて本編シリーズに入りたいけど、そんなんやるパワーはない(断言)
上院の入院した理由に関する話なんかも出来たらやりたいですね。まだ何も考えてないです。
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mail:hoyomotteri ζ^鯖^ζ gmail.com

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ふりーむ!ブランドページ
a film iP!2015年12月号(晋遊舎様)掲載
ドライブ
霧のアルター
3本足のレリカ

super cub 50  Out-Standing Guest Room記事

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